| 社団法人アムネスティ・インターナショナル日本 事務局 石川顕 ■死刑の無い欧州へ行こう 欧州評議会(Council of Europe、CE)という国際機関をご存じだろうか。1949年、人権、民主主義、法の支配の促進を目的に設立され、現在欧州の43カ国が加盟している。この機関に加盟するには死刑を廃止していることが条件とされ、もはや欧州は「死刑フリーゾーン(=無い地域)」と呼ばれている。 その欧州で今年6月に2つの会議が開催された。1つは「第1回死刑廃止世界会議」。死刑廃止を目指す市民団体が呼びかけ、約1千人が参加した会議となった。もう1つは、欧州評議会議員会議。オブザーバー国として加盟している日本とアメリカの死刑が討議の対象となった。この会議に日本から代表団が送り込まれた。免田栄(冤罪の元死刑囚)、原田正治(犯罪被害者遺族)、菊田幸一(明大教授)の各氏をはじめとする市民グループが、欧州で日本の死刑を訴えて来た。 ■死刑制度への意識 ボン大学の学生70人に講演会を開催した時のこと。残虐な犯罪の加害者に対しては、特に死刑にしたいと思うことはないかと聞くと、誰もが「NO」と答えた。イタリアで起きた少女暴行殺害事件では、加害者を死刑にと書いたマスコミに抗議が殺到したそうだ。死刑復活論にその事件が利用されることを市民が拒否したと言う。死刑がない社会に生まれ育つと、そもそも「殺人を犯したら、命をもって償え」という意識すら芽生えないのだろう。死刑制度があるから「死刑にしろ」と考えるのであって、無ければそう思わないだけなのだろう。 また、私たちが驚いたのは「日本ではまだ死刑があるのか?」と言われたことである。「民主主義の先進工業国」と言われる日本に死刑は無いと思われているらしい。日本政府は死刑の情報を国内だけでなく、海外にも隠し続けており、国際的非難すら起きないよう情報操作しているのだ。 ■死刑廃止を求められた日本 「第1回死刑廃止世界会議」(6月21〜23日)では日本からの派遣団が、世界各国から集まった政府要人、市民団体、マスコミを前に、日本の死刑の異常性を訴え大きな反響を呼んだ。最終日には街中で「サイレント・マーチ」が行なわれ5千人が参加、死刑廃止に向けて世界が一丸となっている瞬間であった。6月25日には、欧州評議会議員会議が開催された。オブザーバー参加資格を持つ日本と米国(1996年に資格を取得)に対しても同様の条件を適用するという決議案が提出された。議会は最終的に、日米両国に対し2003年1月までに死刑執行停止あるいは死刑廃止に向けて措置を講ずることを要請する決議を採択した。 ■欧州での会議をどう受け止めるのか? 死刑はもはや、ある国の刑事政策として存置できる問題ではなく、世界中で廃止に向けて取り組むべき課題となっている。つまり、自国民が他国で死刑にならないよう、地球規模で死刑が廃止される必要がある。日本政府はどのような方針なのか。これまで一貫しているのは、死刑を支持する世論と国内犯罪状況を理由に、死刑問題は国内問題であるとする主張だ。国際社会の考え方に、相変わらず背を向けるだけでなく、敵対する立場を取り続けている。 私たちは一人一人はどうすればいいのだろう。死刑賛成の世論に反対派の意見はかき消されそうである。もっと大きなうねりを作り上げていくべきだろう。地球規模でみれば死刑廃止への流れは変わらない。この欧州での動きを活用して、国内での死刑廃止運動に弾みを付けたい。それが、私たちの課せられた課題だ。 ■欧州評議会議員会議で採択された決議(6月25日、抜粋、仮訳) ヨーロッパ評議会のオブザーバー国における死刑廃止 5 議員会議は、それがどこで行われようともすべての死刑執行を非難している。 しかし、とくに人権尊重の義務を負っているオブザーバー国での執行に対して憂慮を感じている。議員会議は未成年者、精神的な病気や障害を負った人々に 対する執行、さらに、死刑事件の必要的上訴のシステムが不十分な点を問題であると考えている。また、日本とアメリカ合衆国の死刑囚監房の状況にも大きな関心を寄せている。 6 両オブザーバー国において死刑廃止を遠く遅らせているさまざまな障害、たとえば、世論の高い支持などがあることを議員会議は把握している。ヨーロッパでの経験が示しているように、こうした障害は乗り越えることができ、また乗り越えなければならない。 8 よって、議員会議は、日本とアメリカ合衆国に対して、以下のように要求するものである。 (a)遅滞なく、死刑執行を停止を実施し、死刑廃止に必要な段階的措置をとること (b)「死刑の順番待ち」現象を緩和するという観点から(これには死刑執行をめぐる秘密性や権利や自由の不必要な制限をすべて止めること、刑の確定後、再審請求後の外部交通の拡大を含む)、直ちに死刑囚監房の状況を改善すること。 10 議員会議は、欧州評議会と日本・合衆国との間に死刑廃止に関する価値観の根本的な違いが存在することについて非常に遺憾に思っている。これらオブザーバー資格をもつ国々に対して、この広く開いた両者の溝に橋を架ける真剣な努力をすることを要求する。 また、2003年1月1日までに議員会議の要求の実現において著しい進歩が見られなかった場合には、議員会議は、両国の評議会に対する包括的なオブザーバー資格の維持について、異議を唱えることを決定するべきである。 |
| ◆死刑のない欧州社会で感じたこと◆ |