【人権ニュース編集部のコメント】
現在、日本の社会に蔓延しつつある薬物の問題は、先進国において共通の課題となっています。行政の行う「だめ絶対!」キャンペーンでは、薬物乱用の歯止めにはならず、いたずらに薬物に対する恐怖感を煽り中毒者の人間性を否定し差別を助長する恐れがあります。
今週号に掲載する投稿には、大麻と麻薬・覚醒剤との違い、大麻を取り締まる理由がはっきりしないこと、大麻の使用が原因で犯罪を犯した事実がないこと、などが述べられていて傾聴に値する意見と思われます。
尚、編集部は、いかなる薬物もその使用を勧めている訳ではありません。


◆大麻問題を人権の側面から考える◆

麦谷 尊雄 (Takao Bakuya)
カンナビスト http://www.cannabist.org/
医療大麻を考える会 http://www.iryotaima.org/

大麻とは何か
 大麻は覚醒剤やいわゆる麻薬などの薬物と同列に扱われることが多い。しかし、ヘロイン、モルヒネ、コカイン、覚醒剤などは、全てアルカロイドというグループに属し、精製されたり合成されて作られているのに対して、大麻は単なる自然界の植物である。
 大麻は中央アジア原産のアサ科の植物であり、縄文時代の遺跡からも大麻の繊維から作られた糸や紐が見つかっている。昔から日本人は糸、縄、布、紙などいろいろな用途に大麻を栽培してきた歴史がある。大麻の種は油を取ったり、食用にしたりと、生活に根づいた有用な植物だった。七味唐辛子には大麻の種が入っているし、お盆の迎え火や送り火に焚く苧殻は皮をはぎ取った麻の茎である。大麻、麻、マリファナ、ヘンプなど様々な呼ばれ方をしているが、どれも同じものである。
 大麻の規制は1937年にアメリカではじまった。大麻規制の背景には、産業界の利害関係者による陰謀や人種差別があったという説があるが、証明はされていない。その後、国連を通じて欧州にも規制の波が広がり、日本では第二次大戦後、GHQ(連合軍総司令部)によって、大麻の栽培、製造、販売、輸出入が事実上禁止された。

大麻の有害性
 大麻には麻薬(ヘロイン、コカイン)や覚せい剤(メタンフェタミンなど)のような身体的依存性や耐性上昇はない。精神的依存性は認められているが、それもコーヒーやお茶といった嗜好品と同レベルの問題である。健康に与える有害性は、タバコや過度の飲酒よりも低いということが認められている。また、これまで取り締まり当局は、大麻の使用が他の「麻薬」や「覚せい剤」の入口になると主張してきた。つまり、大麻を使用する人間は、必ず他の危険な薬物に移行するようになるから大麻を規制しているのだという説明がなされてきたのである。しかし、WHO(世界保健機構)や最近のアメリカ政府の研究機関の報告書(IOMレポート、1999年)では、このような説に根拠はないと否定されている。このように、大麻には取り締まらなければならない理由がはっきりしていないのである。

日本の取り締まりの現状
 日本では大麻取締法により毎年1000人以上が逮捕されている(1999年は1224人)。大麻取締法では、大麻の単純所持について5年以下の懲役、栽培について7年以下の懲役と定められている。しかし、大麻が使用者本人の心身に及ぼす影響、及び社会に及ぼす影響と、刑罰の重さを客観的に比較した場合、非常に過酷な刑罰を科していると言えよう。
 刑事事件の被疑者として逮捕されること自体、大変な社会的制裁となる。長期間の勾留や「犯罪者」としての取り調べなどにより精神的苦痛を受けることはもちろん、当人が会社員の場合、職を失うとか、自営業の場合、店の経営が困難になるといったケースは多々起きている。また新聞やテレビの実名報道により、プライバシーの侵害や社会的信用を失い、家庭崩壊や親戚・近所つき合いに支障をきたすことも多い。有罪判決を受けた場合、刑に服しても「前科」「前歴」がつき、その後の社会生活にハンディを受けるのである。
 大麻の使用が原因で中毒死したり、犯罪を犯したというケースは皆無である。大麻の依存症や、大麻が原因の病気や事故も起きていない。大麻がもたらすほとんど唯一の弊害は、それが法的に規制されているため、所持・栽培すると逮捕されることにある。大麻のようなソフト・ドラッグを個人使用のために持っていた一般市民を、刑事事件の犯人として扱う日本は、自ら国民を犯罪者に仕立て上げていることになる。

個人使用の非犯罪化
 先に述べたように、大麻は人体に比較的安全なことが先進諸国の間では共通認識になろうとしている。その上で、欧州連合(EU)では大部分の国が個人使用の範囲であれば大麻の所持、使用、栽培を容認するようになっている。オランダでは1976年から有害性の強いヘロインやコカインなど(通称、ハード・ドラッグ)の麻薬と、(ソフト・ドラッグの)大麻を区別し、自己使用分の少量の大麻に限り罰しないようになっている。デンマーク、ドイツ、ベルギー、スペイン、ポルトガル、スイス、フランス、イギリスなどの国々でも大麻の容認化が進んでいる。
 こうした容認化は、大麻の「非犯罪化」といわれる考え方に基づいている。それは、大麻を使用することによって生じ得る弊害と、使用者を罰することによる弊害とを比較して、個人あるいは社会に対する危害を最小限に抑えることに主眼を置き、対処しようというものである。その結果、比較的安全な大麻を使用する行為は、刑事罰を科するには値しないという良識的判断に至り、「非犯罪化」が実現した。
 科学的な調査・研究に基づき、人権を配慮した欧州連合の国々の大麻問題に対する指針は十分、参考に値する。日本も大麻問題について、このような世界的な動向を考慮に入れたグローバル、かつ理性的な視点から、改善すべき時期にきているのではないだろうか。

大麻の可能性
 大麻は古くから世界中の国々で民間治療薬、繊維、食料として用いられてきた。薬害問題や環境問題が取り沙汰されている昨今、安全な医薬品そして地球にやさしい資源として、大麻が再び見直されている。
 大麻は木材パルプや建築材の代替(森林伐採の抑止)、石油に代わる害の少ない燃料(地球温暖化の防止)、農薬の必要性の少ない繊維原料(土壌や水質の改善)として利用することができ、環境問題を解決する有効な手段の一つとなり得るという。また、大麻種子は栄養価の高い健康食品としても注目されている。
 アメリカでは医薬として注目され、州レベルでの合法化が実現している。大麻は、がん、エイズ、神経性難病、緑内障などの病状改善に効果がある。アメリカでは1996年以降、住民投票等により、現在9つの州で大麻の医療使用が合法化されている。また、ここ数年間のあいだに発行されたアメリカ、イギリス、オーストラリアなど各国政府の研究機関による研究レポートは、いずれも、痛みの軽減、吐き気や嘔吐の緩和、食欲増進のための治療薬として大麻が有効であると結論づけるとともに、さらなる研究の必要性を求めている。大麻が医薬として使えるようになることは、他に有効な治療法がない患者さんたちの人権として当然の権利ではないだろうか。
 根拠の乏しい有害論に基づき、大麻を厳しく規制し続けることは、こうした可能性までも断つことを意味している。

大麻非犯罪化運動市民団体カンナビスト
http://www.cannabist.org/
TEL/FAX:03-3706-6885
住所:〒154-0015 東京都世田谷区桜新町2-6-19-101

◆大麻問題を人権の側面から考える◆

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