| 翻訳/ 萩谷良さん。 その電話の女性の、答に窮したトークショーのホストに訴える声は、涙のように哀れだった。「どうして、彼らは私たちをこんなに憎むんでしょう、どうしてですか」 彼女の声は、昨今のマスメディアではそう聞かれないものだったが、世界貿易センターの死傷者を目にして、その凶暴な大胆不敵さに震え上がり、「どうして」とつぶやいた二億五千万の米国人の意識のうちに反響している。 これは、とりわけアメリカ的な反応である。昨日をもたない文化、あすの生活の快適さ 、低脂肪アイスクリームや高級車ばかりをもっている文化の反応だ。多くのアメリカ人にとって歴史とはジョン・ウェイン、あるいは彼らが大いに礼賛する無欠、無疵なる建国の父らの偉業だ。外部世界の多くは重要ではない。それらはこの帝国の臣民であり、ゆえに犠牲にしてもかまわないからだ。それらの国の歴史は、合州国と深く相互にからみあっているのだが、重大な結果をもたらすものではない。というわけで「どうして」という問が出てくるのだ。この、米国民二億五千のほとんど片意地といえる無知が、彼らに、2000年10月12日イェーメンで起きた駆逐艦コールの爆破と2001年9月11日の進路を変えたジェット旅客機を見て「なぜ」と言わしめているのだ。 読者がこんな修辞的疑問文に対する答を聞きたくないのであれば、私のこの文章を読むのをやめるのはご自由だ。私の答はきっとあなたには気に入らないだろうから。 世界貿易センターとペンタゴンの航空機による爆破は、2001年9月11日に始まったのではない。また、それは一部の政治家たちが無思慮にも言うような「文明に対する戦争」などでもない。だが、情報提供は政治家の仕事ではない。 それはマスメディアの仕事なのだ。ところが、マスコミの中心的な関心事は、視聴者や購読者を騙すこと。したがって、彼らを不安に陥れないことなのだ。彼らが第一に責任を負う相手は、読者ではない。オーナーか、あるいは株主だ。そして、二億余の人々が情報を与えられず、また誤った情報を与えられていることは、軍産複合体の利益にかなったことなのだ。 ニューヨークとワシントンとペンシルヴェニアを飛んだ自殺フライトの、そもそもの発端は、アフガニスタンの山地での、10年にわたる対ソ連ゲリラ戦にある。この戦争を支援し、促進したのが米国、CIAであり、対ソ連反乱軍に何10億ドルもの金をつぎ込んだのである。その結果はどうだったか。アルジェリアのある社会学者がアルジェで米国人のジャーナリストに語った「あなたの国の政府はバケモノを作り出すのに手を貸したのです」。そして彼は言い足した「いまやそれがあなたの国と世界に向かってきたのです。アフガニスタンでは16,000人のアラブ人が訓練を受けて、正真正銘の殺人マシンに育成されました」(ロサンジェルス・タイムズ1996年8月4日付)。 パキスタンにいた米国のある外交官が次のように言ったとき、彼は、上の社会学者と同じ気持を表現している。「これは、悪行の報いということの狂気じみた実例です。何十億ドルもの金を反共のジハードにつぎ込み、世界中からの参加を受け入れておいて、その結果に知らん顔するわけにはいきません。しかし、我々はそうしたのです。 我々の目標は、アフガニスタンの平和と繁栄ではありませんでした。我々がめざしたのは、共産主義者を殺して、ソ連を滅ぼすことでした(ロサンジェルス・タイムズ 1996年8月4日付2頁)。 アフガニスタンのように戦争で荒廃し切った貧困国が、どのようにして兵器を買ったのだろうか。この国が世界最大のヘロイン生産国であることを、どれだけの人が知ろうか。外貨の不足しているアフガニスタンの「ムジャヒディン」は、CIAの兵器供給者に兵器と引き換えでヘロインを売っている。こうして、「黄金の三日月地帯」が生まれたのだ。 ソ連が敗北を喫し、戦争が終了したとき、反政府軍が見回してみると、その地域はソ連ではなく、米国が支配していた。彼らは、米軍がサウディアラビアのイスラム教の聖地に展開し、反民主的な従属国を支援し、イラクを破壊し、一方的にイスラエルを支援して包囲されたパレスチナ人を犠牲にしているのを見、そして、米国はと検討してみると、そこ見たものはソ連との帝国主義的類似性だった。 地上で最も貧しく、苛酷な状況にある国であるアフガニスタンは、国民の平均寿命が男子で46歳(女性は45歳!)だ。識字率は約29%。それが米国人のとほうもない暖衣飽食ぶりと、米帝国の全世界に及ぶ支配を目にして、苛立っている。この民族主義的、文化的、宗教的、階級的隔たりが、米国の支配に対する深く、久しい憎しみをかきたてる。恥辱は、強烈な力をもつものだ。イスラム世界は、1922年のオスマン・トルコ崩壊とそれに続く20世紀初期から中期にかけての植民地主義の時代以来、夥しくそれを受けてきた。第一次大戦後、屈辱を被ったドイツは世界を制服せんばかりになった。それを軽く考えてはならない。 アフガニスンは、世界の新たな転回点となるだろう。だから、我々はみな、それについて学ばなければならない。 (以上 2001年 著作権者ムミア・アブ・ジャマール) ●ムミアにかんしては下記のURLをご覧下さい。 http://comcom.jca.apc.org/ai/image/mumia_1.gif http://comcom.jca.apc.org/ai/image/mumia_2.gif |
| ◆「同時多発テロ事件」について◆ ペンシルベニア州の政治犯、死刑囚監房の黒人ジャーナリスト ムミア・アブ=ジャマール氏のコメント |