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  「心情の安定を害するおそれがある」として死刑確定者との面会を禁止することは、面 会を希望する本人に対する人権侵害にあたるとして要望をした事例。
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 要望(昭和60年12月17日仙台拘置支所長宛要望)
事件本人Aに関する人権救済申立事件につき、仙台弁護士会は、次のとおり要望いたします。

 要望の趣旨
 事件本人Aに関する人権救済申立事件について調査した結果、貴所が同人に対して昭和59年6月4日以降行っている、死刑確定者S氏との面会禁止の措置は、事件本人に対する人権侵害にあたるので、ただちにこれを取り消されるよう要望する。

 要望の理由
一、 昭和59年6月4日及び5日付で、事件本人から当会人権擁護委員会に対し、いわゆる島田事件の死刑確定者で、静岡地方裁判所において再審審理中のS氏との面会活動に関し、仙台拘置支所(以下単に拘置支所という)が事件本人に対しとった面会禁止の措置につき、人権救済の申立がなされた。
  その内容は、事件本人は昭和49年からS氏の救援活動に加わり、昭和50年3月の面会以来、同氏への精神的支えの為の同氏との面会及び獄中での同氏の健康維持、処遇改善等の要求の為の拘置支所職員との面接を行ってきた者で、現在S中央闘争委員会の委員長をしている者であるが、拘置支所は、

(一) 昭和59年6月2日、事件本人と拘置支所職員との面接の際、M保安課長による、精神障害者である事件本人への配慮を欠いた、激しい口調での「会うのか。合わないのならSを接見室から房に戻すぞ。」等の恫喝により、事件本人に意識障害を生じさせてS氏との面会を実質的に困難ならしめ、更に接見室から暴力、恫喝をもって排除した。

(二) 以後、拘置支所は事件本人に対し、S氏との面会禁止の措置をとり、昭和59年6月4日及び5日、面会申し込みを行った事件本人に対し面会を拒否して事件本人の面会権を侵害し、再審支援活動を妨害した。
 ので、事件本人はその救済を求めるというものである。

二、よって、当会人権擁護委員会において事件本人、昭和59年6月2日事件本人と拘置支所 に同行したB及び拘置支所職員(1回目は支所長T、庶務課長N、保安課長M、2回目は、支所長Y、庶務課長N2、保安課長M)から事情聴取した結果、

(一) 事件本人は昭和50年以来S氏に対する支援活動に加わり、たびたび同氏との面会を重ねて、同氏と再審問題についての打ち合わせをしたり、同氏を激励したりし、その際拘置所職員とも面会して、同氏に対する拘置支所内での待遇改善をも求めてきたものであり、待遇改善要求の際に拘置支所に対する多少の批判、攻撃が行われたこともあったが、これまで大きなトラブルもなく、おおむね、円滑に推移してきた。そして、事件本人とS氏とは互いに信頼しあっており、事件本人の右面会はS氏にとって大きな心の支えとなっていた。

(二) 昭和59年6月2日、事件本人は拘置支所が採用した死刑確定者への新規面会禁止の制度(死刑確定者と昭和59年3月10日までに、文通、物品の授受、面会の実績のある者以外は原則として面会を禁止する制度)について問いただすため、拘置支所の当時のN庶務課長と面接した後、S氏と面会したが、庶務課長との面接の際、外部から入ってきたM保安課長の言動により精神的動揺をきたした事件本人は、その後、S氏と約30秒位面会しただけで接見室前の通路に飛び出た。この時の事件本人の状態は、ぼろぼろ涙を流しており、それ以上S氏と話ができる状態ではなかった。保安課長は、事件本人が涙と鼻水をたらし、「私をこんなにして」等と叫び、一種の精神錯乱状態だった為、面会できる状態ではないと判断し、面会を中止させて、S氏を房に戻した。そして、再び接見室に入ってきた事件本人に対しては、何度も接見室から出るように促したが、事件本人が応じないので職員10人位で事件本人を拘置支所門外に連れ出した。

(三) その後拘置支所は、事件本人をS氏の面会の対象者から除外し、面会を認めないこととした。事件本人は、6月4日及び5日面会を申し出たが、拘置支所側から拒否されたという事実の存在が認められた。
 又、拘置支所がかかる措置をとったのは、事件本人が「死刑囚の心情の安定」及び「拘置支所内の規律」を乱すというのがその直接的理由であるが、潜在的な理由として事件 本人を含むS氏に対する支援者グループの面会要求が、再審とは直接関係のない事柄(死刑囚の顔をみて励ます等)を目的としており、しかも面会をする際、拘置支所に対して施設の管理、処遇に対する批判、攻撃も併せ行うなど、死刑囚に対する身柄の確保、危険の排除、拘置所のその他の面会業務の円滑な遂行等の面からみて好ましからざるものがあり、又、これに対する仙台拘置支所の従来の態度が、他の施設に比べて穏やかすぎていたきらいがあり、本来の線まで戻す必要があると考えていることがうかがわれた。

三、以上の点に関する当会人権擁護委員会の判断は次のとおりである。

(一) 現行監獄法は、死刑確定者の処遇につき別段の規定があるものを除き刑事被告人に適用すべき規定を準用するとしており、現行監獄法上刑事被告人の接見交通について特別の規定は見当らない。従って死刑確定者については、拘禁の目的に相応する内在的な制約がある場合を除き、接見交通は自由に求められるべきである。
 そしてその内在的制約としての合理的制限事由は、
 1、死刑確定者の身柄の確保を阻害するおそれのある場合
 2、施設の秩序維持、管理運営に特段の支障を生ずる場合
 に限られるものと思われる。
 なお、死刑確定者の接見及び信書の発受については昭和38年3月15日付の矯正局長通達があり、右通達によると、前記2点の外に「死刑確定者の心情の安定を害するおそれのある場合」をも接見及び信書の発受の制約事由としているが、本来「心情の安定」は死刑確定者自らが保持すべき事柄であり、又、「心情の安定」というのは、主観的なものであるから、拘置施設側が一方的に判断しうるものではない。これを拘置施設側が事前に一方的に判断し、接見及び信書の発受を禁止しうるとすることは、不当な妨害になる蓋然性が高く、ひいては再審妨害につながるおそれもある。よって「死刑確定者の心情の安定を害するおそれのある場合」は、接見及び信書の発受の制約事由とはなりえず、制約事由としては、拘置施設側が客観的に判断しうる前記1、及び2、の場合に限られるべきであると思われる。

(二) 右観点から本件申立について判断する。
 1、事件本人の申立に係る(一)の事実は人権侵害には該当しない。
 即ち、当日の事件本人の精神的動揺が、保安課長の言動によるものであるとしても、それのみをもって、ただちに人権侵害行為とは言えない。更に、接見室外に飛び出し涙と鼻水をたらし「私をこんなにして」等と叫んでいた事件本人に対して面会中止措置を拘置支所側が講じ、事件本人を拘置支所の門外に連れ出したことは、施設側の秩序維持、管理運営という点からはやむをえない対応というべきであり人権侵害にあたるとは考えられない。             
2、事件本人の申立に係る(二)の事実は、人権侵害に該当する。
 6月2日の事件本人の精神的動揺に基づく言動は偶発的なものであり、このようなことが仮に今後又生じたとしても、その時々での拘置支所側の対応は十分可能であり、事件本人をS氏の面会対象者から永久に除外しなければ、ただちに施設の秩序維持、管理運営に特段の支障が生じるとは考えられない。更に事件本人を面会対象者から除外した潜在的理由として拘置支所側があげたものについては、事件本人の拘置支所に対する批判、攻撃もあったにせよ、それまで大きなトラブルもなく推移して来たことから考えて、ただちに面会禁止の事由とはなり得ないと考える。事件本人とS氏とは互いに信頼しあっていた様子であることは拘置支所側も認めるところであり、このような事件本人を前記の偶発的なトラブルを理由に面会対象者から除外することは拘置支所側の裁量権の逸脱であるといわざるを得ない。

 3、従って仙台拘置支所が事件本人に対してなした面会対象者からの除外、面会の禁止は、合理的根拠がないと言わざるを得ず、すみやかに取り消されるべきである。
よって、要望の趣旨記載のとおり要望する。
 以上      


死刑確定者との面会禁止(仙台弁護士会)

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