拝啓

ご清栄のことと存じます。
早速ですが、当職は、現在、広島入国管理局の収容場に収容されているアブドゥル・アジズ氏から法律事務の依頼を受けた弁護士です。

ご承知のとおり、アジズ氏は、本年2月28日、不法入国及び不法滞在の被疑事実で逮捕され、3月20日起訴され、5月10日より公判が開かれ、6月20日、出入国管理及び難民認定法70条の2の適用により「刑を免除する」旨の判決が言い渡されました。

難民の地位に関する条約第31条においても、「危険な領域から直接来た難民に対して、刑罰を科してはならない」と定められています。このことは、国連難民高等弁務官事務所の執行委負会の結論及び97年及び99年のガイドラインを見れぱ、同時に「拘禁」すべきでないと明確に記載されています。

ところが・アジズ氏は、2月28日から6月14日に保釈決定を得るまでの間、合計107日間を警察の留置場や拘置所で過ごしているのです。このように難民認定申請をしている者が、一般の犯罪被疑者・被告人と同様の扱いをされたことに、私は、驚きと強い憤りを感じます。留置場の中で、21日間は、弁護人以外の者との接見を禁止されました。彼は、21日間接見禁止と閉所での独居拘禁に耐えてきました。

4月5日からは拘置所に移監されましたが、処遇改善は見られませんでした。言葉も、慣習も、文化も異なる中で、うつ症状を呈することも頻繁に見られましたし、孤立感にさいなまれたことも何度もありました。
犯罪被告人として扱われることに屈辱感を感じながらの裁判でしたが、彼は、自身の経歴を含めて、母国で、またパキスタンやアラブ首長国連邦で迫害を受ける恐れについて、具体的に供述をしてきました。一刻も早く拘置所を出たいという気持からすれぱ、裁判で自己の正当な主張をすることは却ってマイナスでした。正当な主張をすることが正義にかなうという思いで、彼は我慢を強いてきたのです。

私は、判決内容についての予測は一切していませんでした。
しかし、このように、「刑を免除する」という判決言渡しがあり、広島入管に留め置かれるという事態になっても、なお、彼が収容され続けているという事実は、彼にとって全く理不尽です。

私は保釈申請においても、しばしば、「これ以上の罰を被告人に与えないで下さい」と述べてきました。彼が拘禁されることや収容されることは、「罰」以外の何物でもありません。日本人であれば、起訴後に速やかに保釈されたでしょう。執行猶予が見込まれるこの種の事件で、107日間も留置場や拘置所で拘束されたという事実そのものが、誰にとっても「罰」以外の何物でもありません。

そして107日間の厳しい拘禁の後に、今度は、入国管理局の収容場での収容が彼をまっていたのです。入管での収容は、すでに11日間がすぎました。判決言渡しからは、5日問がたちました。

たった5日だというのでしょうか。

ケージの中に人間を入れて餌を与えていると考えて下さい。この状態で、何をどう説明しても、人権が保障されているとは言いがたいと思います。電灯を消す時刻も点ける時刻も自由ではありません。閉じ込められた空間で何をせよというのでしょう。「刑を免除する」とはこういうことを示しているのでしょうか。
日本人なら、ありえない処遇だと思います。

法務大臣に要望致します。
速やかに、アブドゥル・アジズ氏を解放して下さい。

敬具

2002(平成14)年6月25日

弁譲士 下中奈美

法務大臣 森山眞弓 殿

※掲載者注 6月28日、アジズさんは広島入国管理局の収容場から大阪・茨木の西日本入国管理センターに移送されました。また、7月1日、検察は地裁判決を不服として控訴しました。




下中弁護士によるアフガン難民アジズ氏解放要請

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