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国際社会から信頼され、評価される刑事裁判手続改革の実現を


 国際的な人権擁護団体として、国際連合経済社会理事会の協議資格をもつNGOであるアムネスティ・インターナショナルは、過去、数回の勧告によって、日本政府に対し、刑事裁判手続の改革、とりわけ捜査段階における手続について、主として以下の改善を求めてきた。
(1)被疑者に対する公選弁護人制度の創設
(2)被疑者の弁護士に対するアクセスの改善(電話による打ち合わせ等も含めた接見交通権の具体的な保障)
(3)代用監獄制度の廃止
(4)被疑者取り調べの可視化(テープ及びビデオ等による記録化)及び具体的な取り調べ規則の制定(尋問規則による長時間調べの制限、取調官の身元明示、弁護士立ち会いの保障等)
(5)起訴前勾留(被疑者段階)における保釈制度の確立
(6)人身保護請求の実効性の確立

 こうした捜査段階における被疑者の権利保障に欠ける状態は、日本政府も批准している市民的および政治的権利に関する国際規約(国際人権規約・自由権規約)14条2項が規定する無罪推定原則の保障が徹底されていないこと、また同条3項の各項の権利保障が具体的に実現されていないことによるものであり、その結果、日本における刑事裁判は国際社会から、必ずしも公正なものとして評価されているとは言い難い。

 当団体、すなわち社団法人アムネスティ・インターナショナル日本は、国連NGOであるアムネスティ・インターナショナルの日本支部として、昨年、法務省・外務省を主務官庁とする社団法人格を取得したところであるが、今般、司法制度改革審議会が刑事裁判手続全体の改革の方向を検討していることについては高く評価するとともに、これら捜査手続における被疑者の権利保障の改善と併せた国民の司法参加の方策を検討されるよう要請するために、現段階で当社団法人理事長の声明という形で、意見を表明するものである。

 国民の司法参加の形としては、現在、陪審・参審の双方の形態が考慮されているが、少なくとも、刑事司法に参加する市民が事実認定にかかわること、参加する市民は広く一般の国民から事件単位に無作為に選出されること、事実認定については市民が職業裁判官と実質的に対等の権限を有し、その数においても上回っていることなどを最低限の要件として参加の形態を構想し、かつ現行の調書による裁判(公判)を払拭することこそきわめて重要である。

 公判の前段としての捜査段階で、捜査機関が自白調書を作成することにのみ精力を注いでいる現状は、公判そのものが自白中心、調書偏重裁判であることの裏返しである。
 このことが被疑者の身柄を拘束し、弁護士との接見を制限し、代用監獄を温存するというおよそ先進国には見られない、国際人権規約の趣旨から大きく逸脱した権利の未保障状態を残す結果となっている。

 この現状を改善していくために、敢えて踏み込んでいうならば、職業裁判官とともに事実認定を行う参審制よりも、むしろ市民が裁判官から独立して事実認定を行う陪審制が有効に働く可能性が高い。

 陪審裁判においては、陪審員のみが事実認定を行うために、陪審員の面前における証人自身の生の証言及び物的証拠の提示が重要であり、直接、それらを見聞きすることが手続の中核となるものである。調書はこれらの証言を弾劾するために必要な限度で参照されるにすぎない。
 参審制度では、現在の公判手続と同様、手続を主宰する裁判官が事実認定をも担当する結果、引き続き調書を重視するおそれがあり、また裁判官の心証形成が手続の公平性、公正性に影響するおそれも払拭できない。
 さらに、このような口頭主義、直接主義に徹した公平・公正な公判を充実したものとするには、弁護人と被疑者との公判開始前の十分な打ち合わせが必要であり、被疑者の保釈をはじめ、被疑者に対する取り調べの記録化及びその規制、被疑者側に対する事前の証拠開示等その防御権を発揮させるための制度保障を欠くことはできない。
 こうした改革こそ、過去において4名もの死刑囚再審無罪という結果を引き起こした我が国の刑事司法の欠陥を是正し、国際社会から信頼され、評価される刑事裁判制度を構築する端緒となるものと確信する。

 貴審議会における中間報告において、「司法制度全体の中で、国民の司法参加(関与)を拡充していくことが必要である」とし、「訴訟手続への新たな参加制度(欧米諸国の陪審・参審制度をも参考としながら、特定の国の制度にとらわれることなく、主として刑事訴訟事件の一定の事件を念頭に置き、我が国にふさわしいあるべき参加形態)の検討等」とされている点について、アムネスティ・インターナショナルが国際的に信頼される司法の確立という立場から述べている上記の諸点について十分な配慮をされたうえで、捜査手続の改革を視野に入れた参加形態の選択・構想に関する結論を出されるよう、本書面をもって改めて要請する。

以上

2001年1月

社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本
代表者理事長        和田 光弘


2001.01 司法制度改革審議会に対する意見表明
−(社)アムネスティ日本 理事長声明